広中和歌子Fax通信 第76号 ( 2006年10月13日 )


北朝鮮による地下核実験、窮鼠猫を噛む?それとも実体のない脅しのゲーム?

   

《デスパレートな北朝鮮》

3ヶ月にわたる自民党総裁選につきあわされた国会、ようやく9月27日開幕、安倍内閣成立。所信表明・与野党の攻防のさ中、中国(8日)、韓国(9日)への総理の訪問が決まる。そこに合せるかのように10月9日、北朝鮮が地下核実験を行ったと発表。マグニチュード4.9規模の爆発があったことは確認されているが、核の汚染は今のところ確認されていない。度々予告があり、北朝鮮のテレビで断言されているが、果たしてそれが核爆発なのか我が国も含め確認には数日かかるという。国際社会、なかんずく国境を接する中、韓、露、そして米国、日本の対応は流動的であり、コンセンサスは得られていない。

日本は北朝鮮船舶の入港禁止、輸入の全面禁止を検討しているが,米国はさらに近海での臨検を検討しているようだ。我が国の法制で果たしてどこまで可能なのか。臨検まで踏み込めば、一触即発、海上自衛隊の人命にかかわる重大事である。

アジア、特に東アジアの平和と安定は我が国の存亡にかかわる。小泉政権下でないがしろにされ、ぎくしゃくしてきた中国・韓国との首脳外交が修復され、一致団結して北朝鮮の問題に当たることを切に願う。

《安倍政権は私たちに何をもたらすのか》

 3ヶ月にわたる総裁選、「美しい国日本」をビジョンにかかげた安倍氏は予想どおり当選を果たした。しかし総理のめざす「美しい国」とは何か、言葉多くして中味は曖昧模糊としたままである。本会議での所信表明、それに続く予算委員会で具体的にどう描かれるのか期待したのだが。何を「美しい」と感じるかは人によって随分と異なるものだ。「美しい国」をめざすといわれても、抽象的でピンとこない人が多いのではないか。反対に「美しくない」と感じることをあげてみたい。近頃「美しくない」と感じるもの、格差社会、障害者切捨て、耐震偽装、飲酒運転、凶悪事件、年金制度、社会保険庁などなど。これらの問題を安倍政権はどのように解決しようとしているのか。「美しい国」という言葉でこの国の本当の問題点を見えなくしているのではないか。 

人口減少が現実のものとなり、都市と地方の間における不均衡、勝ち組・負け組が固定化することへの懸念、厳しい財政事情など解決すべき重要な課題が我々の前に立ちはだかっている今、官僚任せでは我が国の未来は開かれない。

《官邸のリーダーシップ》

 今回の組閣で期待されるのは官邸で総理を支える補佐官5人の任用であろう。しかし、安倍政権の危機管理能力が問われた北朝鮮への対応では、安全保障担当の小池補佐官の顔がさっぱり見えてこない。果たして上手く機能するのであろうか。

小泉内閣では、経済財政諮問会議が脚光を浴びていたが、議員内閣制では、政策決定の場は本来閣議のはず。閣議が形骸化しているため、竹中大臣の下、官僚を排して議論を行った同会議が脚光を浴びたのだ。  

私は細川内閣で環境庁長官を務めたが、閣議は各省の事務次官からなる事務次官会議を経た案件しかかからない仕組み。大臣発言は原則として事前に役所が登録したものしか認められていなかった。大臣同士で省庁を越えた案件を役所に指示するとできない理由が返ってくる。異常なまでのタテ割と官僚支配を目の当たりにし、この国は何かおかしいと感じた。

いつから閣議が形骸化してしまったのか。半藤一利氏著「日本のいちばん長い日」には、敗戦を覚悟した鈴木貫太郎総理が、閣議を主導してポツダム宣言受諾に向かう様子が生々しく描かれている。戦後も吉田総理をはじめ卓越したリーダーシップで我が国を導いた首相がいた。自民党長期政権で派閥の論理で首相・閣僚が順送りされるようになり、小沢代表が指摘しているように、外交はアメリカまかせ、内政は経済成長の成果をいかに全国に分配するかに徹すればよく、結果として官僚まかせ、政治家はそこにぶら下がるようになってしまった。

官僚支配・タテ割り行政を打ち破るには、首相が議論を主導し、閣議で実質的な意思決定を行うことが求められる。そのためには首相が、国を導くビジョンと見識を有していることが不可欠。首相補佐官をはじめ官邸スタッフを充実させて「しっかりと」安倍総理に勉強して頂き、閣議での活発な議論を期待する。