第156回国会 本会議
平成15年3月21日(金)深夜
「イラクに対する武力行使後の事態への 対応についての報告」に対する
質疑及び答弁
質問要旨
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○広中和歌子君
私は、民主党・新緑風会を代表して、イラクに対する武力行使後の事態への対応についての報告について質問いたします。
ブッシュ大統領は、全世界の人々が恐れていたとおり、現地時間で三月十七日夜、アメリカ国民に対するテレビ演説でイラクのフセイン大統領に最後通告を行いました。
フセイン及びその息子は四十八時間以内に亡命しない限り、重大な結果になると。その重大な結果とはイラクへの空爆の開始を意味します。そして、四十八時間後の期限切れを迎えた昨日、アメリカによるイラク攻撃が始まりました。
民主党は、この戦争に抗議し、それを支持する小泉総理に、国連に基づく平和的解決に立ち戻るようアメリカを説得することを強く求めます。
以下、その理由を述べます。
ブッシュ大統領は、その演説の中で、武力行使を行うとしたらイラク政権に対してであり、無実な一般国民に向けられたものではない、彼らを独裁者から解放するのだと言っています。しかし、本土に空爆が始まれば、その被害は無差別に広がります。多くの人々が死傷し、都市とそのインフラはずたずたに壊されます。暴力から民主主義を守るという大義名分の中で、イラクの人々と国土が傷付きます。何十万、何百万という難民も発生することでしょう。そのほとんどは罪のない子供や女性、争いとは無関係な人たちです。一般市民の犠牲について総理はどう考えますか。
アメリカの持つ兵器はハイテクで、強力かつ効果的です。二十一世紀を迎えるに当たり、私たち人類は戦争に血塗られた二十世紀と決別したいと願ったはずです。武力によらない解決を願ったはずです。国連憲章も我が国の憲法の理念もそれを示しているではありませんか。
第二の理由は、これまでの人類は二度の世界大戦で五千万以上の人が殺された反省から国連を創設しました。国連憲章は、自衛のためかあるいは国連安保理の容認以外の戦争は一切禁止しています。したがって、今回のアメリカ等によるイラク攻撃は国連憲章の違反になりませんか。 なぜなら、イラクは米国を攻撃もしていないし、一昨年、九・一一テロを起こしたとされるアルカイーダとの関連も証明されていない。そのイラクを、新たな安保理決議のないまま、安保理決議六七八、六八七、一四四一をベースに、一方的に三十万人の兵力、六個空母陣の大軍で攻撃することは明らかに国連の権威と信頼性を損なうことになりませんか。新たな安保理決議が必要だとしていた総理のこれまでの主張に反しませんか。お伺いいたします。
ブッシュ政権による武力行使が許されない第三の理由は、イラクへの攻撃は、現在ではなく、将来脅威になるという理由で行われるからです。それが実行されれば、これは明らかに先制攻撃であり、先制攻撃が国際社会で容認されることに道を開くことにつながるからです。恐怖が先制攻撃を生み、そこから更に武力行使の連鎖が生まれます。総理の御所見を求めます。
第四に、この先制攻撃の目的はサダム・フセインの武装解除、大量破壊兵器を問題にしているはずなのに、今はフセイン政権そのものを倒すことにその矛先がシフトしていることです。サダム・フセイン憎し、フセイン政権打倒が先にあるのではありませんか。それは内政干渉ではありませんか。
第五の理由は、今回のアメリカ等の攻撃で今後多くのテロを世界じゅうに引き起こす可能性が生まれるからです。特に、イスラム圏の人々の反感は中東問題を更に悪化させます。文明の衝突を引き起こすことを私は懸念いたします。総理の御所見を求めます。
第六に、戦争は紛争解決の手段としては必ずしも所期の効果をもたらすとは限りません。アメリカはベトナムでの体験からそのことを十分に知っているはずです。特に、相手の国民の自尊心を傷付ける場合には究極の勝利は望めません。国際間の問題は、地道な辛抱強い外交協力で解決していかなければなりません。このことは総理のお考えではなかったのですか。
第七に、戦争が経済に与える影響です。原油の価格と供給の不安定化などによって、世界の経済は様々な形で大きな痛手を受けます。我が国の経済にとってもその影響は計り知れません。総理の評価を伺います。
第八に、戦争による環境破壊も見逃すわけにはまいりません。戦争は究極の環境破壊です。 現在、関西では第三回世界水フォーラムが開催されています。二十一世紀は、戦争ではなく、環境の世紀にしなければ人類の存続はあり得ません。
第九に、この戦争にアメリカは多くの戦費を費やすでしょう。その試算を教えてください。アメリカは、当然、同盟国日本に応分の負担を求めてくることになるでしょう。政府はどういう形で戦費と戦後処理の負担を考えていらっしゃいますか。 自分たちの望むこと、正しいことに応分の負担をすることは当然ですが、日本はアメリカと友好国であり、日米安全保障条約を結んでいるというだけでは、血税を支払うことに国民は同意しないでしょう。戦争で破壊した後、再建支援をするという愚かな行為にではなく、査察を徹底して行い、平和的解決のために努力をすることではありませんか。
一昨日のブッシュ演説の直後、そして昨日開戦の日、小泉総理は改めて米国への支援を表明しました。国民の八割が反対しているにもかかわらずです。なぜ、日本は国連の権威を無視し、国際法学者の多くが国際法違反として反対するアメリカのイラクへの武力行使に同意し、支持しようとするのでしょうか。それが同盟国、友好国として取るべき道とお考えなのですか。今回の対イラク戦で日本はどのような形で協力するのか、具体的にお述べください。 テロ特措法は厳格に適用されるかどうか、重ねて伺います。
アメリカがイラクに大量破壊兵器を破棄させるべく最大の圧力を掛けているのだから国際社会も一致協力することが大切だという川口外務大臣のこれまでの繰り返しの発言を私も一応受け止めさせていただきました。その圧力もあってか、イラクは穏当に国連の査察を受け入れてきたではありませんか。通常兵器と言われるアッサムード2の廃棄にしても、少なくとも所持する五〇%は実行されたではありませんか。
確かに、イラク全土で査察を効果あらしめるにはイラク側の自発的協力は欠かせず、それをイラクはこれまで小出しにしてきたことは事実かもしれません。しかし、これは、フランスやドイツが主張するように、国連査察チームがもう少し時間を掛ければ解決することではありませんか。
戦争が始まれば、各地にテロが多発するかもしれません。テロ攻撃に対し、アメリカは国土安全保障省を設置し対応を一本化していますが、日本の場合、テロ対策にどのような緊迫感を持って対応策を検討していますか、伺います。
さらに、イラクとその周辺国に滞在する日本人、自らを危険にさらしながら救援活動をするNGOの人々の安否が気遣われます。ガスマスクや解毒医療薬などの支給を含め、邦人保護のための日本政府の対応を伺います。
小泉総理、日本がアメリカを支持するのは、緊迫する北朝鮮問題がすぐそこにあるための苦渋の選択であり、その脅威に対応するためにはアメリカの協力が欠かせないということなのですか。それなら、総理は国民にもっとそのことを説明するべきです。第一、アメリカははっきり具体的に北朝鮮問題の平和的解決について日本に保証をしているのでしょうか。
総理、あなたはいつも短い言葉でしか説明なさいません。世の中が平和なときは、それはそれでパンチが利いているという形で国民に受け止められたかもしれません。しかし、現在のような危機の時代には、国民にはっきり説明してくださらなければなりません。政府には説明責任があります。
その点、イギリスのブレア首相は、初めからアメリカ支持の態度を明らかにしつつ、自らの政治生命を懸けてでも国民に平易に状況を説明してきたのと対照的です。少なくとも、ブレア氏は国民に対してフェアプレーをしてきたと思います。
しかし、ブレア政権がアメリカに加担して武力行使に参加することを決定したとき、イギリス労働党院内総務クック氏始め、ブレア政権の閣僚の辞任が相次いでいると報道されています。
小泉政権の閣僚の中にはそのような正義に基づいて行動する勇気ある方はいらっしゃらないのでしょうか、伺います。
私は、かつてアメリカで長期に暮らし、アメリカを第二の故郷とさえ思う者です。アメリカの友人の多くは、ブッシュ政権の初めに武力行使ありきのやり方を批判し、自分たちの国のありようを非常に心配しています。そして、日本の原口国連大使の、日本はアメリカを支持するという、早々と去る二月の国連の場での発言を日本の世論と受け止めています。
私は、日本の声を国の内外に発信する必要を感じ、仲間の女性議員と署名を集め、小泉総理あてに米国等のイラクへの武力攻撃に反対することを強く求める申入れを行うことにいたしました。七十二名の衆参女性議員のうち、過半数の四十二名が署名しました。その申入れは英訳され、外国通信社経由で世界じゅうに発信されています。
申入れ書は、日本人が過去の経験から学んだ教訓として、戦争や紛争で最も深く傷付くのは女性や子供を含む一般市民であり、暴力からは何も生まれてこないことを強調しています。また、八割を超える市民が武力攻撃に反対しているにもかかわらず、日本政府の立場がその世論を反映していないことへの憂慮も表明しています。
去る十二日、総理には忙しいということで会っていただけず、福田官房長官に直接署名の束を手渡しましたが、私どもの申入れに対し、総理のお考えを聞かせてください。
総理、そして議員の皆様、私たち日本の進むべき道は、国連を重視し、国際的なルールにのっとって、平和で持続可能な地球社会の秩序を構築することだと思われませんか。
日本は、既に、亡き小渕総理などのイニシアチブで、予防外交や人間の安全保障という概念に基づき国際的に活動を始めているではありませんか。そのために、政府も議員も官僚もNGOも個人も、それぞれに創造的なリーダーシップを発揮するべきです。 日本は、世界最大の大量破壊兵器の被爆国であり、武器輸出をしたことがないという特質を生かし、平和国家を今こそ世界にアピールする機会です。
政府は、速やかにアメリカに対しイラク攻撃の中止を申し入れるべきことを強く要請し、私の質問を終わります。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 広中議員にお答えいたします。
米国のイラク攻撃は国連憲章違反ではないかとのお尋ねでございます。
私は、国際社会が一致結束する上で、新しい安保理決議が望ましいと考えてきました。新しい決議が採択されなかったことは残念でありますが、今回の米国等の武力行使は国連憲章に違反するものとは思っておりません。すなわち、査察官の累次の報告等で明らかなとおり、イラクが決議一四四一で履行を求められている武装解除等の義務を履行していないことから、更なる重大な違反が生じていると言わざるを得ず、停戦条件を定めた決議六八七の重大な違反が生じていることから、決議六七八に基づき武力行使が正当化されると考えております。
イラク攻撃の目標に関するお尋ねですが、米国政府は、従来より、達成すべき目標はあくまでも関連安保理決議により義務付けられた大量破壊兵器の廃棄であると明確に述べています。
イラクに対する武力行使についてのお尋ねでございますが、私は、イラクにおける戦闘が一刻も早く、人的、物的被害もできるだけ少なく終結することを心から望んでいます。
また、イラク問題の本質は文明の衝突の問題ではありません。イラクが長年にわたり関連安保理決議を履行せず、大量破壊兵器を廃棄してこなかったことであります。このための国際社会による懸命な努力も尽くされ、イラクの対応を根本的に変えるための見通しが全く見いだせない状況の下、米国等が武力行使に至ったことはやむを得ないことだと思います。 イラク攻撃による経済への影響についてでございますが、戦闘開始以降、我が国の経済・金融市場は安定して推移しており、混乱は生じておりません。
今後の動向については、戦闘の推移などに左右されるものと考えられることから、現時点において確たることを申し上げることは困難ですが、本件が内外の経済に混乱を引き起こし、国民に不安を生じさせるようなことがあってはならないものと考えております。
このため、政府としては、各国との協調の下、引き続き為替、原油、株式などの経済・金融市場の動向を十分注視しつつ、不測の事態が生じないよう、原油の安定供給、金融システムの安定確保などについて、日銀とも一体となって万全を期していく考えであります。 戦費の試算等についてでございますが、米国行政府として戦費の試算を公式に発表したことはありません。我が国としては戦費負担については考えておりませんし、また、米国よりも要請を受けていません。
我が国は、さきに発表した対処方針に基づき、総合的かつ効果的な緊急対策を強力に推進するつもりでございます。また、これらの措置とは別に、テロ対策特措法に基づく支援を継続、強化します。
日本国民の安全確保のための対策についてでございますが、イラクとその周辺における在留邦人の安全確保のために、危険情報を速やかに発出するとともに、周辺国の在外公館において在留邦人との連絡、避難の体制を確立しています。さらに、一部の国については政府チャーター便や政府専用機の派遣も考慮しており、必要な準備を行っております。
国内でのテロを未然に防止するため、テロ関連情報の収集・分析を強化するとともに、国内重要施設、在日米軍施設、各国公館の警戒警備など、国内における警戒態勢の強化、徹底を図ります。
我が国関係船舶の航行の安全を確保するため、航行警報などを通じて情報を提供するとともに、関係国に対して警備強化の要請を行っております。
我が国の米国支持の背景についてでございますが、米国は我が国にとって掛け替えのない同盟国であり、我が国を取り巻くアジア地域の平和と安全の確保にとっても米国の役割は不可欠であります。そのような米国が大量破壊兵器廃棄という国際社会の大義に従って米国自身大きな犠牲を払おうとしている今、我が国が可能な限りの支援を行うことは同盟国として当然のことであると私は思います。
辞任する閣僚はいないのかとお尋ねであります。 米国を始めとする国々のイラクに対する武力行使を支持するとの立場は小泉内閣の一致した立場であります。本件が経済に混乱を引き起こしたり国民に不安を生じさせることがないよう、全閣僚一丸となって必要な施策を効果的かつ迅速に遂行してまいります。
我が国の立場についてのお尋ねでございますが、武力行使を支持するということは容易な決断ではございません。しかし、大量破壊兵器の脅威は人ごとでもありません。武力行使なしに大量破壊兵器が廃棄されない現在の状況の下では、今般の行動を支持することが我が国の国家利益にかなうものと考えております。
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