「地球益のことを考え草の根支援を増やしていきたい」
ハンガー・フリー・ワールド 1998年3月号 (日本ハンガー・プロジェクト発行)
掲載インタビュー(部分)

ODAの1%をNGOの支援に

- 広中さんは飢餓撲滅議員連盟の事務局長として、途上国支援に力を入れています。

私のなかにあるのは「地球益」という考え方です。日本国内では高齢化社会や経済の安定など取り組むべき多くの課題があります。一方、世界に目を向ければ、そのような課題を含めた日本の存在が周辺諸外国との関係の上に支えられていることがわかります。海外との関係も、これまでのように国、政府間のつながりだけではなく、国民同士のつきあいをどう深めていくかが課題ですね。援助にしても、少なくともその一部は二国間の援助から、国連やNGOを通して行う方向に変えていくべきだと思います。

- 日本のODA予算が10%削減されるということですが、どのようにお考えですか。

問題ですね。財政改革が必要なのはわかりますが、地球に存在する国の義務として国際協力はやはり継続していくべきだと思います。ODAの削減は、協力に反対する後援団体がないので、一番削減しやすいのかもしれません。特にひどいのは、国際機関への任意拠出金です。義務になっている「分担金」は減らすことができないので、任意の拠出金は当初の予算案では40%前後もの削減だったのですから。

- 国際機関は日本に依存する割合が大きいので、40%前後も減らされたら大打撃ですね。

国際機関にとっては大きなダメージですし、日本の信頼にもかかわってきます。私はこれではいけないと思い、よく使う手なのですが、予算復活を訴える国会議員の署名を集め始めました。結局142名ほど集めることができ、国際問題調査会のODA小委員会でも問題提起したりして、昨年並みの拠出は出せるように落ち着きました。

- 日本のODA予算は大規模なインフラ整備が多く、逆に草の根への予算があまりに少ないのではないかと思います。

外国のODAでは、NGOを通じた援助の占める割合が大きくなっています。例えば、私が現地で聞いた話ではカナダではODA予算の半分近くになっていますし、アメリカでも1割*くらいです。日本はまだ0.5%、50億円くらいでしょう。せめて約1%、100億円をNGOに援助するところからスタートしたいですね。ゆくゆくはODAの10%はNGOなどの草の根支援に向けてほしいと思っています。
(*最近では3割ほど)

- 目の前に大きな資金がありながら獲得できないのは、NGOの方にも問題はあると思います。

NGOの多くはすばらしい活動をしていると思います。しかし、自分たちの活動に没頭するあまり、他の視点から見るということができなくなっているのではないでしょうか。一つ一つのNGOがそれほど大きくない現在の日本では、国や国連機関のような大きな組織に影響を与えるためにはネットワークが不可欠です。ときには小異を捨てて大同につくような大胆さもみせてほしいですね。もっともこれは私たち野党にもいえることですけど。

- ODAの予算に組み込まれたとき、NGOの役割は何でしょう。

NGOのよさは、小規模ですが、草の根の人々に対して直接働きかけることができることです。限られた予算を有効に使い、知恵、手、足、口、使えるものをすべて使ってきめ細かな活動をしてきたNGOの特徴を生かし、さらにそれを進める形で途上国の人々に浸透していくのがNGOの大きな役割だと思います。

マイクロクレジットは途上国の自立を早める

- 広中さんが関わっているマイクロクレジットについて教えてください。

マイクロクレジットというのは、貧しい人々が自立するために少額の資金を無担保で貸し付ける制度です。飢えた人たちに対して、魚をあげるのではなく、釣り竿を渡す援助ですね。彼らはわずかな資金を元手に事業をおこすことができます。そして軌道に乗ったところで借りたお金を返しながら事業を拡大していく。この制度のいいところは、単なる資金や物資、インフラの提供と違い、貧困に苦しむ人の自立を促すということです。わずかな資金ではじめることができ、お金が一方通行ではなく循環するので、一つの事業が自立したら次の事業と、どんどん広がっていくことができるのです。本当に明日の生活もわからないような人たちに対しては、お金や食糧を無条件で提供することも必要かもしれません。しかし、そのことが各国の「援助疲れ」を招いてきたことも事実なのです。

- そのような貧しい人たちにお金を貸して返済が可能なのでしょうか。

バングラデシュのグラミン銀行はマイクロクレジットの草分けとして有名ですが、返済率は98%だそうです。他の機関でもだいたい同じような数字が残っています。成功の要因の一つとして小さなコミュニティ単位で貸付を行っているということがあげられます。融資する側がコミュニティに入り込み、まったく見ず知らずの人の間で貸し借りをするわけではありません。貸し手がいつも近くにいるのですから借りた人たちは一生懸命に働き、返そうとします。貸した方でも返済してもらえるように支援できます。

- まさに「顔の見える」支援ですね。

そのとおりです。そして、マイクロクレジットの支援対象の多くは手に職を持たないために自立できない農村の女性です。そのことも高い返済率に影響しているのでしょうね。昨年2月にワシントンで行われたマイクロクレジット・サミットには、現在民政党代表の羽田孜さんとともに参加してきましたが、各国元首をはじめ、国連機関、国際金融機関のトップ、国会議員など3000人も集まり、この会議から貧困解消のための行動を起こそうと、盛り上がりました。

- グラミン銀行の成功から、マイクロクレジットに対する理解が世界的に高まってきたようです。

世界銀行のウォルフェンソン現総裁はマイクロクレジットに非常に理解を示し、世銀のトップスタッフ300名を、マイクロクレジットによる支援を行っている現場などに派遣し、レポートを書かせたくらいです。

- マイクロクレジットのこれからの課題は何でしょう。

現在のシステムで支援できるのは、経済的にも、身体的にもこれから働いて自立する余裕のある人々です。もっとせっぱ詰まった人たち、例えば都市のスラムに住む人たちにどのようなことができるのか。今の時点でのスラム対策は、農村の自立を促し、人々が都市に流出しなくてすむようにするというものです。それでもスラム化が避けられず、むしろ進行するようになったときにどのような対応ができるか考える必要があるでしょう。

貧困撲滅の方向を見つけたのは1NGOとの出会いから

- そもそも、広中さんがマイクロクレジットに興味を持たれたのはなぜでしょう。

もちろん以前から貧困問題、南北問題には興味を持っていました。しかしあまりに対象が大きすぎて、何をしていいのかわからない。そんな気持ちでいた1991年、ワシントンで開かれた全米ボランティア会議にゲストスピーカーとして招かれました。そこで出会ったのがサム・デイリー・ハリス氏でした。リザルツというNGOの創始者で、貧困問題に取り組んでいるということでした。彼と話をしているうち意気投合し、帰国後に日本の支部から連絡があり、活動に参加するようになったのです。

- 具体的にはどのようなことをなさったのですか。

世界銀行をはじめとした国際金融機関のトップあてに、その融資の5%を最貧層の人々の自立資金に充ててほしいという依頼状を送ってほしいということでした。私は衆参あわせて194名の署名を集め、依頼状とともに送りました。同時に欧米各国の議員からも多くの署名が集まったそうです。この署名は国際金融機関に影響を与え、融資の少なくとも5%が貧しい人々に直接届くようになりました。そのハリス氏が計画したのがマイクロクレジット・サミットです。

- 広中さんがこれからの日本人に望むことをお聞かせください。

現在、日本の最大の問題はとにかく国の経済を安定させることです。中長期的には高齢化問題、環境問題、福祉などもあります。しかし最後に私たちが求める"生活の質"は安全な水、空気、食糧、土壌があってこそ。そのことを実感するためにも日本人にはどんどん海外に出て、そこで暮らし、幅広い視野を身につけてほしいですね。